現場日記

産婦人科医院が出来るまで①| 敷地

インスタグラムにて連載していたものに、追記してご紹介いたします。
クリニックを新規開業の方のご参考になれば幸いです。

この計画は5社による設計コンペによって佐々木事務所が選出され実現したプロジェクトである。

既存敷地には鉄骨2階建てのヨガや妊婦さんが体を動かすための建物があった。
敷地は南北で高低差が2.2m程あり南側に建物、北側の高い場所は駐車場になっていた。

他社案では低い場所に3層で建てる案や、高い場所に2層で建てる案などがあった。
いずれも敷地地盤を掘削せずに計画する提案であった。
その場合、前者は鉄骨造の耐火建築となりコストがかかる。
後者は階段が10数段必要となり、スロープは最低でも22m必要となり現実的ではない。
しかし、これだけの土を全て掘削し残土処分するのもどこか強引である。
その場合、1階はほぼ地下空間となり、暗く、風通しも悪くなる。

そこで既存地盤の半分、1.1mのみ掘削することにした。

これならスロープも現実的な長さとなり敷地内に収まる。
階段も10数段必要なものが半分ほどに抑えられる。(最終案は5段)
建物を半地下にすることで建物高さも抑えられ、街への圧迫感も弱まる。
半地下の室内は壁に囲まれた安心感があり
高い位置に窓を設ければ、空まで視界が広がっていく解放感も得られるだろう。
これまで住宅設計で提案してきた「閉じながら開く」が用途が変わっても応用できる。
敷地の特性を読み、デメリットを解決しながら、新しいメリットを作る。
既存敷地と建物の使い勝手、先の見えない関係を紐解くところから計画は始まった。つづく

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