住宅

ひろがり・つながるエントランス


住宅展示場に行くと玄関、そのさきに玄関ホール、シューズクローゼットなどがセットになった空間が用意されています。エントランスというより収納に特化した計画に偏ってきて来ているように思います。エントランスとはどのような場所で、何が必要で、考え方を広げるとどのような魅力がある場所になるのでしょうか。無駄なものを省いて新たな魅力を探ってみたいと思います。


■佐々木事務所が設けないもの
・シューズクローク
・(閉じた)エントランスホール

佐々木事務所ではシューズクローク(下足専用の部屋や通路)を設けることはお施主さんの強い要望がない限り設けません。それは施工面積を増やすことでコストアップ(利益)につなげるためのものであることを知っているからです。大切なのは収納量の方ですよね。

扉で閉じられた玄関ホールも設けません。床面積アップ、コストアップ、掃除する面積アップ、でも利用時間少ない。暑い寒い。建売住宅の間取りでみかける標準化された部屋も、よくよく考えると必ずしも必要ではなく、むしろデメリットの方が目立ってしまうこともあります。
※今後もご紹介していく佐々木事務所の「設けないものシリーズ」は特に事務所の考え方において重要な項目ですのでご注目を!

□佐々木事務所の提案
・目立たない収納
・玄関から冬温かく、夏涼しさを感じること
玄関収納で大切なのは隠すことより収納量です。シューズクロークのように隠さず、使いやすい場所に必要な収納を設ければいいのです。でも収納を目立たせたくないということであれば、壁と同じ素材で収納を作れば(写真C、D、E)収納の存在感はありません。壁の一部が扉になっているという作り方です。
玄関の広さは住まい方に応じた計画をご提案しています。靴を脱ぐ場所が2畳ほどの広さであっても他の部屋と一体に計画することで広く感じます。ほかの部屋と合わせて玄関で感じる広さ20畳という住宅もあります。そうなると広すぎて玄関は冬寒く、扉から冷気が入るから部屋の中も寒くなるのではと一般的には思われています。しかし、しか~し、寒くならずに開放的な空間を作る方法があるのです。それにより冬室内に入ると温かく、夏は涼しさを感じる玄関になっています。(熱環境については開口計画で触れます)

そもそも玄関とは、街や道路のある「外部空間」とプライベートな「内部空間」の「間」にあるとても重要な場所です。内外をつなぐ場所であり、出勤、帰宅と気持ちを切り変える場所でもあります。玄関が心地よい空間だと一日が楽しくなりそうな気がします。

□事例紹介

A:インナーガーデンと一体の玄関。窓は少ないが開放的な空間。
B:玄関は二世帯の家族交流の場。扉は全面開放可能で桜のある公園とつながる。
C:インナーガーデンと一体の玄関。壁柱の間が収納。
D:外部用倉庫(土間)が隣接した玄関。土間と木板で仕上げを分ける。リビングから光が注ぐ。
E:自然光で明るい玄関。開口下部は下足収納。突き当り廊下の壁面は全面収納。
F:右側のキッチン背面が収納。奥にスタディスペース。キッチンから子供の勉強をチェック。

□まとめ
玄関ひとつとっても面積の有効活用、コスト調整、空間の作り方など様々な提案が可能であることがお分かりになったと思います。打合せ時は機能的な内容が多かったりしますが、暮らし始めてからの、自宅に帰ってきてホッと落ち着ける場所になることを計画時に大切にしています。また、玄関は学校や会社に行くためにスイッチを入れる場所でもあります。気持ちのオン/オフは玄関で行われるのです。そのために玄関がどのような空間になっているかが重要になってくるのです。

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